検索結果画面で答えが表示され、ユーザーがサイトにアクセスせずに検索を完了する「ゼロクリック検索」。2024年8月以降にGoogle検索において「AIによる概要」が実装されてからこの現象が急速に拡大し、多くのサイト運営者が頭を悩ませています。
「せっかく上位表示されているのに、クリック数が減っている」「トラフィックが落ちているけど、どう対策すればいいかわからない」そんな悩みを抱えていませんか?
しかし、ゼロクリック検索を単純に「悪いもの」と捉えるのは早計かもしれません。実は、この変化をポジティブに捉えることで、より質の高いユーザーを獲得し、効率的なサイト運営を実現できる可能性があるのではないかとマーケティング視点で考えました。
この記事では、ゼロクリック検索の現状を踏まえたうえで、従来のネガティブな視点だけでなく、新たな機会として捉える戦略的なアプローチとしてを紹介したいと思います。変化する検索環境に適応し、競合他社に差をつけるために何ができるのか。その対策と考え方について紹介していきます。
ゼロクリック検索とは
ゼロクリック検索とは、私たちが普段利用しているウェブ検索で検索を行った際に、検索結果のページ(SERP)ですでに知りたい情報が得られて、どのウェブサイトにもクリックすることなく情報を確認する行動を終えてしまうことを指しています。
いままでの検索では、私たちユーザーは検索結果に表示されたウェブサイトのタイトルなど見て、欲しい情報がありそうなウェブサイト(ホームページ)のリンクをクリックして各ウェブサイトを訪問し、必要とする情報を得る。という行動があったことは、過去の体験として思い出すことができると思います。しかし、検索エンジンもより便利になった結果、検索結果のページ自体に調べたいことの回答表示される機会が増加し、結果ユーザーの疑問や問題が解決することが増えました。いわばこの状態が「ゼロクリック検索」と言えます。
検索エンジン別のゼロクリック検索
現在さまざまな方法でウェブ検索を行うことができますが、その代表格となるのが「検索エンジン」ではないでしょうか。
もっと分かりやすく言うと「Google」「Yahoo」「Bing」といった検索エンジンが日本では多く利用されています。利用されている根拠としては外部ツールの値を参考にしていますが、2024年7月から2025年7月の検索エンジンの利用率は以下の画像の通り、Google:約80.5%、Yahoo:約9.3%、Bing:約8.4%です。

また各検索エンジンでこのゼロクリック検索がどのようなものかの理解を深めるために、各検索エンジンの検索結果ページ(SERP)のキャプチャを紹介します。
検索ワードは共通して「日本の人口 2025」とゼロクリックに至りやすい検索にしました。
下記の結果のように情報を調べて、獲得するという一連の行為においては私たちユーザーにとって便益が高くなるように検索エンジンも進化していることが伺えます。
Google検索結果

Yahoo検索結果

Bing検索結果

ゼロクリックで検索が完結する理由
人口などの単純な検索であれば、ゼロクリック検索が発生することが容易に理解はできます。しかし、もっと複雑でサイトに記載されている情報を閲覧しないと取得できない情報がありそうですが、なぜゼロクリック検索で完結するのか。ということに疑問を抱きます。
先ほどの通り、AI技術が進化したため、検索エンジンはより便利になっていきます。ゼロクリックで検索が完結する主な理由としては、クリックしなくても回答が得られるためですが、得られる理由と機能の例を見てましょう。
強調スニペット
検索結果の一番上に、質問に対する回答が大きく表示されます。例えば、「缶コーヒー 砂糖の量」と検索すると、その回答に該当するウェブサイトの内容が要約されて表示されていることが画像から見て取れると思います。この表示機能により、検索したユーザーが満足する「解」が得られるとクリックする必要がなくなります。

ナレッジパネル
人物、場所、組織、物事などを検索した際に、信頼できる情報源からまとめた情報が検索結果の右側に表示されます。例えば、強調スニペット同様に「缶コーヒー 砂糖の量」と検索すると、写真、コーヒーに関する基本的な情報、栄養成分氷、そのソース元の情報などが表示されます。検索する内容によっては所在地、歴史などがさまざまな情報がパネルで表示されます。ユーザーがクリックをしてサイトを訪れなくとも、ある程度の情報を獲得する事が可能です。

AIによる概要
Google検索で、AIが生成した要約情報を提示する機能です。「日本の人口」のようなシンプルな回答ではなく、疑問や回答を必要とする投げかけに対してAIが関連性の高い複数のソースから回答を提示する機能です。2024年8月中頃からこの機能は実装され、徐々に回答の精度も高くなりつつあり、このAIによる該当だけで十分な情報を獲得することも可能になりました。これもゼロクリックに繋がる機能の一つと言えます。

関連する質問(他の人はこちらも質問)
検索した内容に関連した質問の一覧を検索結果に表示する機能です。質問以外に回答を閲覧することができ、さらに回答をみた内容と関連が高い「質問」がさらに表示されるという機能です。結果として関連度の高い質問と回答の情報を得ることが可能なため、サイトをクリックせずに解決する場合もあります。

ローカル検索・ローカルパック
地域と店舗や場所などを検索した際にGoogleマップとその地域の店舗情報が表示される機能です。例えば「新橋 ランチ」と検索した際に新橋駅の周辺でランチが食べられるお店がGoogleマップで表示され、さらに画像、店名、住所などの情報を取得することができます。検索ユーザーは店舗のサイトを訪れることなく、この情報だけで決めることも可能なためゼロクリックに結びつきやすい機能と言えるでしょう。

ゼロクリックの割合は?
2024年のデータですが、アメリカではゼロクリックの割合は58.5%、ヨーロッパ(EU)では59.7%がGoogleの検索で発生しているというデータがあります。
日本におけるゼロクリックの割合は?
残念ながら検索プラットフォームを提供する組織・団体の公式や、検証をした結果を発表している信頼できる組織・団体・個人のデータは確認ができないため、日本でどの程度ゼロクリック検索が発生しているかは不明です。
ただ確認できる複数のサイトデータの情報から、「ゼロクリック検索」の可能性がある推測される数値の算出をしました。
前提としてナレッジ系のサイトだけではなく、さまざまな種類のサイトからデータを取っているためデータの信頼性という意味では非常に限定的になります。汎用できる数字ではないことを前提に参照ください。
ゼロクリック検索の割合(総計)
14.28%
2024年、2025年データから算出した複数サイトの総計したゼロクリック検索であろう推測した数値です。
ゼロクリック検索の割合(サイトごと)
56.10~12.43%
2024年、2025年データから算出したサイトごとのゼロクリック検索の推測した割合です。
ナレッジ、疑問、質問、ノウハウなどのコンテンツが多量に含むサイトほど、この割合が多い傾向にあるようにデータからは見て取れました。ただし確認したサイトの母数が不足しているため、確証まではいかないというのが実際のところです。
ゼロクリックはネガティブ?ポジティブ?
ゼロクリックはネガティブでしょうか。それともポジティブでしょうか。どのようにとらえるかは、立場によって変わるため如何様にもいえると思います。
よく耳にする話などを踏まえてポジティブ、ネガティブをみていきます。
ウェブサイト運営者はネガティブと捉える
例えばサイト内の広告表示、商品紹介などで収益を得ている運営者。例えばウェブで商品を販売するECサイト運営者。またはコーポレートサイトを保有する企業にとって、ゼロクリック検索はネガティブと捉える場合があるかと思います。
ネガティブとなる理由はいくつかありますが、代表的なものを紹介します。
- アクセス数の減少:検索結果からウェブサイトへの流入が減るため、広告収益やアフィリエイト収入の減少に直結する可能性が高い。
- ブランド認知の機会損失:ユーザーがサイトを訪問しないと、ブランドやサービスの認知がされず、ブランドの価値を伝える機会損失になります。
- SEO戦略の再考:疑問・回答関連のキーワードで上位表示を目指すだけでは、流入を確保できなくなる可能性があります。そのため、高い価値のある情報、深い洞察や体験談など、ユーザーがクリックするべくしてクリックするページとコンテンツ作りの転換が必要になると考えられます。
検索を利用するユーザーはポジティブと捉える
普段私たちは、知りたい情報、理解したい物事、手に入れたいサービスや商品に関して情報を取得する行動の手段の一つに検索エンジンの利用があります。
このような検索エンジン利用者にとって検索エンジンの利便性が高まるということは好意的に受け止められるのではないでしょうか。
- 時間の節約:検索結果から直接答えを得られるため、複数のサイトを行き来する手間が省けるため、時間を大幅に節約することが可能になる。
- 効率性の向上:迅速に知りたい情報を得られることで、疑問や問題など知りたいことがすぐに解決に結びつきやすくなります。仕事などのシーンではタスクを効率的に進められ、プライベートでも友人と旅行の行先の情報が手早く取得できることで効率が向上するなどのメリットがあります。
- 利便性の向上:天気や店舗の情報をスマートフォンを使って検索結果から即座に取得できるなど、すぐに知りたい情報が表示されることは人が生活するうえで非常に大きい恩恵であると感じるのではないでしょうか。
ゼロクリック検索の対策
前述のとおりゼロクリック検索は非常に歓迎されていない印象を受けます。ウェブサイトによっては度重なるGoogleのコアアップデートなどで、サイトの流入数が減少していることも事実としてあります。
ゼロクリックという事象をポジティブな見方をすると
一方でサービスの提供や商品の販売をするサイトにとってはゼロクリック検索はポジティブな現象ではないかとも考えることができるのではないでしょうか。
なぜならば、「興味や関心度が低い」、「サービスや商品への購入・利用確度が低い」ユーザーを弾くことができる
マーケティングな側面としては、サイトへ流入したユーザー、セッションを解析して、どのようなコンテンツが見られているか。など、情報を収集して、サイト改善やユーザーの興味関心度を予測をすることがあります。
つまりは、ゼロクリックになることで興味・関心が高いユーザーサイトをクリックし流入する。結果として確度の高いユーザーに対して、ウェブサイトを通じてアプローチすることができるため、より確度の高い情報のみ収集し、問い合わせなど「人」が手を動かすコストも低減できるのではないか。という仮説もあり得るのではないでしょうか。
この仮説はマーケティングの観点から一理あると感じる一方で「有効と考えられる点」「懸念される点」があります。
1.有効と考えられる点
- 1-1.ユーザーのフィルタリング効果が期待できる
- ゼロクリック検索で完結するユーザーは、情報収集や「解」と言える情報で満足する「低関心層」。
- クリックという能動的な行動を行うユーザーは、より深い情報を必要とし、購入や問い合わせなどの行動に近い段階にいる可能性が高い。
- その結果、サイト内のデータが「質の高いユーザー」に偏り、サイトの解析結果の精度高くなる。
- 1-2.成約率(CVR)の改善につながる可能性
- エンゲージメント率が高まるためサイトの目標(問い合わせなど)の導線改善に結びつくデータ収集ができる
- 情報だけを必要とするユーザーの問い合わせが減少し、結果人的コストの低減に結びつき、確度の高い問い合わせにコストを集中できる
- 「ただ調べてるだけ」のユーザーが減り、CV見込みの高いユーザーが集まるため、結果的にコンバージョン率の向上が見込める。
- 1-3.広告費やリソースの最適化
- 低関心層が大量流入しても、直帰率が高く解析データ上のノイズになる。
- ゼロクリックがフィルターになることで、施策の投資効率が高まる可能性がある。
2.懸念される点
- 2-1.潜在顧客を取りこぼすリスク
- まだ興味が低い段階のユーザー(潜在層)は、ゼロクリックで情報が完結すれば、そもそも接点を持てない。
- ブランド認知やリードナーチャリングの観点では、この段階でユーザーとの接点を失うのは機会損失になり得る。
- 2-2.データ母数が減ることで解析精度が下がる可能性
- フィルタリングはされるが、母数が少なすぎるとA/Bテストやユーザー行動分析が統計的に弱くなるリスクがある。
- 2-3.競合がゼロクリックでブランド露出していた場合
- 競合サイトやサービスがゼロクリックの情報ソースになっていると、ユーザーがそこで満足し、競合の印象が強まる可能性がある。
- 特にGoogleのAI概要(AI Overviews)で競合が情報ソースになっている場合、潜在顧客をすべて競合に奪われるリスクがある。
ゼロクリック時代にとれる対策とは
仮説に対する対策とも言えますが、ゼロクリック検索は「検索の質」つまり検索するキーワードでゼロクリックが発生しやすいキーワードとゼロクリックが発生しにくいキーワードがあると考えられるのではないでしょうか。
これはニーズ深度の問題かもしれませんが、例えば歯医者で矯正またはインプラントを考えているとします。
ざっくりしたユーザーフローとしては
1.情報の収集:掛かる費用は?治療の期間は?どのような施術なのか?
2.治療先の検索:自宅から通える範囲で信頼できる歯医者はあるのか?または口コミの評価は?
恐らくここまでがゼロクリック検索になりやすいと思います。
3.比較検討:掲載している情報を見て信頼できる確証となる情報を探すためウェブサイトを回遊
4.アクション:定めた治療先への予約、問い合わせを実施
結論 自社サイトにコアな情報や信頼足る情報があるかが決め手となる
上記は考えらえるアクションの一つです。ここで重要なことは、情報がすぐ出てくるような浅いワード(例えば「今日の天気は?など)に対するアンサーではゼロクリック検索になり、サイトへ流入してもらえる可能性が実に低いという点です。
これはキーワードを分類することで見えてくるのではないでしょうか。下記の表は一つの参考ですが、この分類で自身のサイトコンテンツがどの分類に属するのかを把握するにはちょうど良いと思います。
| 分類 | ワード例 | ゼロクリック発生度 | CV(コンバージョン)期待度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| ナレッジ型(ゼロクリック高) | 今日の天気 東京 1ドル 円 消費税率 2025 HTMLとは |
★★★★★ | ★ | Googleが直接回答、検索結果だけで完結しやすい |
| ファクト型(ゼロクリック高) | 日本の人口 2025 オリンピック開催地 会社名 電話番号 |
★★★★☆ | ★ | ナレッジパネルやSERP概要で完結しやすい |
| ハウツー型(ゼロクリック中) | WordPress ログイン方法 Google広告 使い方 マンション 選び方 |
★★★☆☆ | ★★☆ | 部分的にSERPで答えが出るが、詳細情報はサイト流入あり |
| 比較・検討型(ゼロクリック低) | クラウドERP 比較 地域名+不動産会社 戸建て おすすめ 予約システム 導入 料金 |
★★☆☆☆ | ★★★★☆ | 表示だけでは決められず、サイトで詳細情報確認が必要 |
| 課題解決・意思決定型(ゼロクリック最小) | 顧客管理システム 導入 相談 イタリア旅行 価格 問い合わせ 新宿 弁護士 M&A相談 |
★☆☆☆☆ | ★★★★★ | 購入や問い合わせ意欲が高く、ゼロクリックがほぼ発生しない |
キーワードの分類からゼロクリック検索への対策が可能になると考えます。さまざまな側面をもつウェブサイトがあるため一概に「この方法」と一律には対処することは困難ですが、方向性として定めやすい環境を整えることが可能になります。
これからのサイト戦略
すでにゼロクリック検索が発生している状況で無策でサイト運営をすることほど悪手はありません。正常なサイト運営を目指すならば計画性を持って実施をしていくことが、さらなる差別化に繋がります。
これまでのことを踏まえたSEOを含めた戦略案としては以下が考えられます。
-
STEP1 キーワード選定方針
- 「比較・検討型」~「課題解決型」に注力
- ゼロクリック率が低く、購買・利用意欲が高いユーザーを獲得しやすい。
- 特にBtoBや高額商材サービスではこの層の流入が価値が高い。
- ナレッジ型は“露出目的”で選択的に活用
- トラフィックではなくブランド認知を取るために、ゼロクリックが多いクエリでも上位表示を狙い、認知だけを獲得。
- AI概要(GoogleのAIオーバービュー)や強調スニペットで競合より先に露出を狙う。
-
STEP2 コンテンツ構成戦略
- ゼロクリックが発生しやすいクエリ対策
- SERP上でブランド名を印象づけるコンテンツを作る。
- 例:「HTMLとは?」→タイトルやスニペットにブランド名を含める。
- 構造化データ(FAQ、How-to、Product schema)を設定し、自社が情報ソースとしてGoogleに認識されるようにする。
- ゼロクリックを避けたいキーワード対策
- 「比較」「料金」「導入事例」「相談」など意思決定ワードを含むロングテール記事を作成。
- 競合比較表や価格シミュレーションなど、SERP上で完結できないコンテンツを提供。
- 問い合わせ・資料請求ボタンを記事内に自然配置し、CV動線を強化。
- 流入したユーザーの解析を精度高く行う
- GA4、ヒートマップを活用し、比較・検討系キーワードから流入したユーザーのページ内行動を解析。
- 「滞在時間が長い記事」「問い合わせボタンまでのスクロール率が高い記事」を優先的に強化。
-
STEP3 サイト全体の戦略
- トラフィックボリュームよりも「コンバージョン率」を重視
- 潜在層を取りたい場合は、ナレッジ型記事にリターゲティング広告を紐づける。
- サイト内のコンテンツを「認知記事 → 比較記事 → 問い合わせ記事」という導線設計にする。
まとめ
結論として質の高いコンテンツを作ることができるかが分水嶺
ゼロクリック検索について調べ、考察を重ねた結果、行きつく先としては質の高いコンテンツ作りこの1点と言えるのではないでしょうか。
ただ質の高いコンテンツというのはユーザーに対してはもちろんのこと、Googleなどの検索プラットフォームに対しても質の高さを気にする必要があるでしょう。
すでに上位表示のサイトやページは100点満点中98点や99点。もう少し細かくなると99.8点と99.7点で争っているような状態です。
コアアップデートなどロジックの変更でこの点数が変動することはあれど、高い水準で競っていることに違いはありません。それを押しのけ更に上位を目指す。そしてクリックをしてもらえるサイト、ページ、コンテンツ作り。なかなかに難易度が高いとも言えますが、実直にコンテンツ作りをすることでユーザーの関心を集めるなどやり方は如何様にもあるため今後はさらに工夫のし甲斐があるとも言えます。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は「ゼロクリック検索の対策とこれからのサイト戦略」について紹介をしました。
今後AIの進化や、検索エンジンの進化によってゼロクリック検索どころか、検索の様式すら変わってしまうかもしれません。ただ現状できる策を考え、方策を採用するかを決めて、実施するのがベストと思います。