業界で確固たる地盤を築きたい。競合に打ち勝ちたいがどのように戦えばいいかわからないという場合はありませんか。そんな時はランチェスター戦略を利用して、弱者でも戦略を立て必然に勝つ方法を採用することが重要ではないかと思います。この記事ではランチェスターの戦略から弱者が勝つ方法、その実践方法などを過去の事例を交えて紹介します。
ランチェスター戦略とは
ランチェスター戦略は、「小」が「大」に勝つための、「弱者」が「強者」に打ち勝つための、そして「後発サービス」が「先発サービス」を追い越すための実践的な戦略理論です。特に、限られたリソースしか持たない小規模企業や新規参入企業が、大手企業や既存のサービスと効果的に競争するための方法論として、いま現在も使われているマーケティング理論の一つです。
戦略を立てて勝ち筋を創り出す
ウェブ市場では活用する技術、ツールなどが年々様変わりする市場であります。また情報量が非常に多いため、一つひとつの情報に対して「ユーザー」は十分な時間を割くことが難しく、さらにターゲットとなるユーザーへ届ける(もしくは見てもらう)だけでも、検索エンジンがよいのか、リスティング広告なのか、他メディアの特集記事にするのかなど、多くの選択肢から採用する必要があります。
もちろん十分な資金、人員、時間を割くことが叶うならば、さまざまな配信方法がとれますが、それは大手だから取れる戦略でもあります。また無策で自社商品やサービスの宣伝を行ったところで十分な成果をもたらす可能性が低く、競合に打ち勝つことも困難になります。
このランチェスター戦略では、施策を実施する前段階で、どのような道筋つまり戦略で臨むのか。それを定めることで、勝ち筋を創り出すことを目的とした理論です。
イギリスで提唱され日本でビジネス戦略へ転換
理論の起源
イギリスのエンジニア、フレデリック・ランチェスター(1868〜1946年)が第1次世界大戦中に提唱した数理モデルが基礎となっています。当初は軍事戦略として考案され、第2次世界大戦中にコロンビア大学のバーナード・クープマン教授らによって更に発展されました。
ビジネスへの応用
戦後、日本のコンサルタント田岡信夫がこの理論をビジネスに応用し、マーケティング手法として体系化。特に、弱者が強者と戦うための戦略として、多くの日本企業に採用されました。
一騎打ちで挑む 第1の法則
第1の法則(弱者の戦略)とは
ランチェスター戦略には「第1の法則」と「第2の法則」がありますが、第1の法則は主に競争力の弱い企業(弱者)が市場で成功するための戦略として知られています。Webマーケティングにおいても、小規模な企業や新規参入者が競争に勝つための指針となります。
わかりやすい例としては「美容液」「戸建て」などのワードは競合性が高く検索結果の上位はすでにブランドとして確立されている大手のサイトが表示されています。この中にあなたのビジネスを表示させることは非常に難易度が高く、多くの時間と費用を要します。
このような場で戦うのではなく、もっとニッチで、競合が手を伸ばしていない(もしくは競合性が薄い)キーワードでの上位表示を目指す。全体のパイは少ないが淘汰される可能性が低くなります。このような視点が第1の法則となります。概念や活用の例について一般的なランチェスターの法則に沿って紹介をしていきます。
第1の法則の基本概念
- 一点集中主義: 限られたリソースを特定の市場やターゲットに集中させる
- 局地戦を展開: 大手と真っ向から戦わず、ニッチ市場を狙う
- 個別対応で差別化: 顧客一人ひとりに合わせたマーケティング施策を展開
Webマーケティングにおける「第1の法則」の活用例
ランチェスター第1の法則である上記基本概念に沿って、Webマーケティングにおける「第1の法則」を実践する際の活用例は以下のような施策が考えられます。
| 施策 | 概要 | 活用方法の例 |
|---|---|---|
| ターゲットを絞る | 広範囲ではなく、特定の顧客層にアプローチする | 特定ユーザー属性(世代、性別、年齢)ワード、特定エリア(○○市、○○区)のワード、特定の機能(車好きのためのショールームのようなガレージ付き小さいコンパクトハウス)のワードを狙う |
| 差別化戦略 | 競合とは異なる独自の強みを打ち出す | ターゲット顧客に合わせたオリジナルコンテンツを発信(例:ファンタジー世界観溢れる外観と内装を備えた中世風一戸建て) |
| リピート率の向上 | 継続的な接触により、顧客ロイヤルティを高める | メルマガ・動画・SNSの活用し、情報をリーチさせることが重要だが漠然と配信しても意味が無いため、ターゲットを絞りつつも差別化された情報配信を行う |
確率戦で勝利をつかむ 第2の法則
第1の法則では1対1の一騎打ちを想定した戦い方として紹介しましたが、ランチェスター戦略の第2の法則は、広域戦。つまり1対nの戦いになります。
ウェブマーケティングに限らずビジネスでは特定の企業と一騎打ちを行うシーンよりも多数の競合が存在するマーケットでの戦いが一般的です。本来の軍事戦略的な考え方でいうと確率戦が当てはまります。
確率戦についてざっくりと説明すると
自軍と敵軍でサバゲーを行う際に、自軍10名、敵軍6名で撃ち合うことをイメージしてみてください。
第二の法則では「戦闘能力 = 武器性能 × 兵力の二乗」です。武器性能が同一であると想定し、自軍は10名なので、1/10で相手6名から攻撃からくる可能性があります。敵軍は自軍10名の攻撃を6名で受けることになります。
先ほどの戦闘力に当てはめると自軍の戦闘能力は10×二乗なので100、一方敵軍は6名なので36。自軍対敵軍=100:36 になります。約2.8倍ほどの戦力差がという計算になるわけです。
第二の法則では「戦力の二乗に比例する影響力」を持つとされているため、Webマーケティングの領域においても、さまざまな場面で影響することを予め想定しておく必要があります。
第2の法則が適用される状況
- 市場シェアを獲得したいとき: 競争優位を拡大し、市場の主導権を握る
- ブランド認知を強化したいとき: 大規模なマーケティング施策を展開し、圧倒的な知名度を獲得する
- リピート率を高めたいとき: 既存顧客への継続的なアプローチを行い、ロイヤルカスタマーを増やす
Webマーケティングにおける「第2の法則」の活用例
Webマーケティングにおいて第2の法則を活用するためには、以下のような施策が考えられます。
| 施策 | 概要 | 活用方法の例 |
|---|---|---|
| 広告投資の最適化 | 大規模な広告展開で市場の認知度を高める | Google広告やSNS広告で競合よりも多くの露出を確保するといった、多様な広告プラットフォームと広告表示回数、広告パターン数を確保することで、その市場においてターゲットユーザーに対して接点を多く持つことが可能 |
| SEOとコンテンツ施策 | 優位性を生かした多量の情報配信 | その市場において有用なコンテンツを多く輩出し、かつ広範囲におよぶキーワードで上位表示を行うことで、市場の網羅性を狙う |
| UGCコンテンツの誘導 | 新たなユーザーの獲得、または競合サービス(製品)からの乗り換えを誘導 | SNS、サイトへの口コミや使用感の投稿を促すキャンペーンを展開することで、すでにあるブランド力の強化とシェア獲得を行う |
弱者と強者の戦術の違い
これまでに第1の法則、第2の法則がありましたが、それぞれが弱者、強者の戦い方となります。
強者とは人員、資金、時間を潤沢に投入できる組織で、弱者とは限られた人員、資金、時間という構図が成り立ちます。
Webマーケティングでは単純に大企業が強者、中小ベンチャー企業が弱者という構図にはなりません。
それは「なぜか」という点ですが、企業規模が小さくともウェブ上では非常に強力な名称で検索され、利用されているサービスやウェブメディアが存在します。そしてそれは大きな企業が資本を投下しても到達できない場合があります。オフラインの「ブランド」と同じようにウェブでもこの理屈があり、強者はすでにブランドを確立したサービスであり、大企業であっても新規参入であれば弱者となる可能性がありあます。
一般的なサービスや商品であれば、すでに名のある企業がウェブでは露出しますが、何をもって強者、弱者と定義するかはその市場ごとに異なる場合があるため、まずは正しく市場を理解して、強者、弱者を見極める必要があります。
弱者と強者がそれぞれが選ぶべき戦術
弱者が選ぶべき戦術
- 一点集中
- 局地戦
- 差別化
強者が選ぶべき戦術
- 広域戦
- 確率戦
- 物量戦
弱者がとるべき戦略
すでに前述の通り強者に対して正面から勝負を挑むのは勝ち目が薄い戦いになります。第2の法則でいくと、より大きい強者と戦うことは消耗戦を意味します。この状態では資金、時間に対する損害が大きくなるばかりで実入りが少ない状態に陥ります。
まずは弱者がとるべきベストな戦略を選択することが重要となりますが、どのような戦略があり、どのように選択するべきなのは、その判断材料はどのように調達するのかを紹介していきます。
小さい市場のナンバーワンを目指す
弱者がとるべい戦略としては小さい市場でナンバーワンになるというものです。
大きいを何に捉えるかという定義はありますが、地域という物理的な市場の括りでいえば「世界の市場」から「日本の市場」となるでしょう。そこからさらに細分化していき、都道府県、市区町村と、市場規模を細分化していくことが可能になります。
業種や業態によって小さい市場は異なりますが、ウェブマーケティングでは「特定のキーワード」「特定ジャンル」「SNSのタグ」などが考えられます。商品やサービスで考えると、機能や性能、セグメントしたターゲット層、他社と差別化したポイントなどが挙げられます。
小さい市場を分類の仕方
小さい市場で1位になる。それはどの市場で戦うかを決めることになります。例え小さい市場を狙ったとしても無策で1位を取れるほど簡単ではありません。どのような軸でセグメントを行うのかという点も重要です。まずはセグメントの仕方を見ていきましょう。
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ウェブ媒体でセグメントする
ウェブマーケティングでは複数のチャネルを保有したほうが有利ではありますが、投入できる資本が限られている場合は検索エンジンの特定キーワードに注力するべきなのか、特定のSNSに資金と時間を投入するのかを選択することが小さい市場でナンバーワンになれる場合があります。利用している年齢層、目的や楽しみ方がSNSやウェブ媒体によって異なり、さらにはその媒体の中でもどの層(タグやキーワード)を狙うのかなど、深掘りする点が多くあります。
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ターゲットをセグメントする
マーケティングでの常套セグメントの一つですが、年齢や性別、家族構成、就業状態、年収、趣味趣向といった側面でセグメントを行います。例えば富裕層向けのとある場所にある別荘を販売している事業などで有効です。富裕層でも別荘を買い求めるタイミングがあるため、このようなデモグラフィックデータの利用が適しています。ただし、このセグメントは事前リサーチや、過去のデータ整理を行う必要があるため気軽にセグメントがしにくい点がデメリットになります。
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商品・サービスをセグメントする
例えば「歯ブラシ」という商品はセグメントする軸として「歯ブラシの堅さ」「ブラシの密度」「ブラシ先端の形状」「ヘッドの長さ」「ヘッドの幅」「持ちての形状」「持ち手の幅」「ネックの種類」などといった複数の要素で構成されています。もちろん歯茎の状態や好み、歯の形状からより良いものを選択しますが、これをセグメント化して、特定分野で1位を目指す戦略も考えられます。
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地域をセグメントする
このセグメントでは競合調査や利用者の情報が非常に重要になるセグメントです。都道府県という大きなエリア区分で戦うよりもまずは市区町村や店舗(事業所)を中心として半径○○㎞範囲などでのセグメントがまずは理想でしょう。とはいえ、広域戦になりやすいため、新規参入の場合は競合や利用者層を見定めてエリアの特定することが必要になります。
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ニーズ・ウォンツでセグメントする
利用者層の情緒部分に特化したセグメントの仕方です。ユーザーの「○○したい」「こういうのが欲しい」の特定ニーズに合わせた市場分類です。服を選ぶのが面倒、もしくは専門家に選んでほしいなどのニーズに向けた服のサブスクはこのようなニーズ特化といえます。
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差別化ポイントでセグメントする
自社の商品、サービスを競合他社と比較して、差別化できるポイントに絞り込んだセグメントです。「小さい一戸建て」という分野がありますが、高齢者向けの小さい一戸建てというサービスではどうでしょうか。さらに絞りこみ、特定医療機関や看護師が巡回に来るような高齢者向けの終の棲家になる小さな一戸建ての販売などが該当します。
弱者のための5つの戦略
弱者がとるべき戦略として5つの戦略が考えられます。
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局地戦
局地戦とは狭い市場で戦うことを意味します。地域やキーワードなどを限定して、そこに経営資源を投入する戦い方です。
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接近戦
何に対して「接近」するかによりますが、商品・サービスであれば利用するターゲットユーザーに対して接近戦をします。どれだけユーザーファーストであるかがポイントです。例えばとある店舗では来店した人に対して、懇切丁寧に説明、案内をすることで顧客数を延ばした実績などが挙げられます。
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一騎打ち
多数の競合他社との戦いは経営資源が豊富にある状態ではないと厳しい戦いになります。そのため、ある競合1社だけと戦えるシチュエーションを創り出します。例えば美容院、理容院は多数存在しますが、「男性」「白髪染め」だけに特化した店舗はそう多くないです。特定のエリアに1店舗あるかないか程度だと思います。このような状況をあえて創り出し一騎打ちに持ち込む戦略です。
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一点集中
その事業者が持ちうる経営資源(ヒト、モノ、カネ)をある一つのことに投下します。上記一騎打ちの例では「男性」「白髪染め」の事業であれば、店舗周辺の立て看板に広告を出し、ウェブ広告でも特定地域の特定ワードだけで広告出稿を行います。また自社サイトでも特定キーワードに集中させ、サイト内のコンテンツについて、特定ワードで網羅するなど1点集中させることで成果を上げる方法です。
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隠密戦
自社のプロモーションは大きく目立てばいいというものではありません。必要なのは、自社のサービス・製品を必要としている人だけに届けることができるか。この1点に尽きます。大きく目立ちすぎる戦略は強者である他社競合に模倣され、自社がナンバーワンになる前にシェアを奪われるリスクを想定しておく必要があります。そのための隠密戦であります。
小さい市場の成功事例
マンションやビル設備の設置、修理、補修、点検業務を行う、新規の法人立ち上げ例です。
コーポレートサイトが無い状態からの立ち上げで、事前に調査したところある程度競合性が高く、対象となるエリアで競合となる事業者が存在している状態でした。また従業員は代表者ひとりであるため、人員的な限度があり、また代表自身が技術者であることから、営業方法はウェブのみで集客したいという要望でありました。
この事業者のコーポレートサイトを制作して公開しただけでは、検索上位表示は厳しく、問い合わせまで至ることは困難であると事前調査で容易に予想ができました。
会社としては営業部隊を持たないため、ウェブでの集客をどのようにするかが大きなポイントです。すでに多くのキーワードで競合が表示されている状態のため同じワードをサイトに設定するにはリスクが大きく、新規法人としては早めに問い合わせの獲得が必要であったため、別の集客方法を検討する必要がありました。
徹底したヒアリングで差別化ポイントでのセグメント
まずは代表から細かくヒアリングする必要があり、マンション・ビル設備の情報収集、いままでの実績や対応してきた修理など、事細かに事業や経歴についてヒアリングに協力をいただきました。
ヒアリングした情報をまとめると、競合がほぼ記載していないある特定の対応が可能なことが分かりました。さらに詳しくヒアリングをすると「その対応」については業界のシェアが高い設備ながらも、当時はメーカー修理、部品製造が停止してしまったため対応できる技術者が少ないという状況でした。
かなり確度の高い差別化ポイント発見できたため、強みの一つとしてコーポレートサイトに掲載することが決まりました。
市場の調査とキーワード設定
法人としては事業内容と差別化できる内容が定まった状態になったため、どのような市場に投入し、戦うのかを選別するフェーズに移ります。
SNSを実施するリソースも資金も割けない状況なので、コーポレートサイト1つで集客、問い合わせまでを十分に行っていく必要があります。ひと月あたりに欲しい(必要な)受注数をヒアリングすると、問い合わせ数がどの程度あればよいのかは把握できKPI設定を行うことができます。
次に集客数です、どの程度のセッションが得られるかは予測になりますが、サイトの軸になるキーワードと、関連するワードや差別化ポイントとなるキーワードを選定していきます。先ほど設定した差別化に繋がるワードの調査を行ったところ、大きい母数ではないものの、がある程度の母数で検索がされていることが分かりました。またニーズも多いことが事前の調査で分かっていましたので、このワード群で上位表示を狙うことにしました。
コーポレートサイトの上位表示
コーポレートサイトをリリース後の約1ヵ月はインデックス、アクセス状況の観測を行いつつ、テキストや内部リンクの調整を行ってきました。そのタイミングで、サイトから問い合わせが来るようになりました。
ワードの順位をみると差別化としたワードで上位表示がされており、特定のワードについては最上位(一番上)の表示になっているワードもありました。競合も設定している事業系ワードでは事前の予想通り上位表示は出来ておらず、表示回数、クリック数は少ない状態でありました。
その後
差別化したワードを中心として問い合わせはコンスタントに来るようになり、初期に設定したKPIは達成しました。またある程度サイトを運用し、コンテンツの増強を進めていく中で、他の事業系ワードでの集客ができるようになり、差別化ワード以外でも問い合わせの獲得ができる状態までになりました。
このようにランチェスターをなぞったような事例ですが、小さい市場でナンバーワンになり、徐々に自身のシェアを広めていくという戦略が見事にはまった事例を紹介しました。
戦略の実施方法
戦略の選定する前に知るべき情報
小さい市場を狙う前にジャストアイデアで狙うべきではありません。「兵は拙速を尊ぶ」と言いますが、必要な時間をかけずに無手で戦いを挑んでも勝ち目は薄いです。特に現代のウェブは情報過多であり、ユーザー側も取捨選択を前提として情報を探します。
どこの誰がどのような情報を欲しているのか、そして何が提供でき、他社はどのように打ち出しているのか。この程度までを把握しておかないと話になりません。ざっくりと下記の情報を分析し把握することに小さい市場で勝つための近道になります。
- 自社分析
- 顧客分析
- 競合分析
- 市場分析
- 差別化
- セグメント化
3C分析で自社、顧客、競合をしる
3C分析はビジネス戦略を策定する際に有効なフレームワークで、「Customer(顧客)」「Company(自社)」「Competitor(競合)」という3つの要素で分析を行います。
顧客分析ではニーズや購買行動を分析します。またウェブマーケティング領域では、同時にターゲットユーザーがどのようなニーズがあり、キーワードで検索しているのかという調査・分析を行う必要があります。
自社の強みや弱みといった全体像の洗い出しを行うことも検討します。この分析はSWOT分析が適しています。全体像を把握ができますし、脅威や機会の洗い出しができるので、今後狙う市場や避けるべきポイントが明確になります。
競合分析を実施する
小さい市場でトップを狙うためには競合分析は不可欠な分析です。例えば先ほどの成功事例の通りウェブ検索のみで勝負する場合も競合の分析は必要不可欠でした。競合の情報を読み解くことで狙うべきポイント、避けるポイントを見極める必要があります。
競合を見つける方法
新規参入する場合や、いままでにおぼろげに競合とみている場合などは、どこが競合であるかをまず把握する必要があります。
すぐに取り組める方法としてはウェブ検索があります。例えばリフォーム事業であれば「地域名+リフォーム」「地域名+マンションリフォーム」などのワードで検索すると多くの競合となる事業所を見つけることができます。
ウェブ検索で競合を見つけるデメリットとしては、ホームページを保有していない事業者を見つけることができない点にあります。
事業者の中でホームページを保有していない事業者は少ないですが、地域や業種によってはサイトが無い事業者もいるため注意が必要です。
ファイブフォースう分析で競合分析を行う
競合を分析する方法の一つにファイブフォース分析があります。
この方法は自社と競合との関係性を明確にすることに優れた分析手法であり、下記の5つの要素に分けて自社と競合との関係性を見ることができます。さらには仕入先、顧客との関係も明らかになるので、自身が戦うべき市場(業界)全体を俯瞰してみる場合に非常に適した分析手法です。
- 既存競合他社との競争:同じ市場で競合するWebサイトやオンラインサービスとの競争状況
- 新規参入の脅威:新たなWebサービスやeコマースサイトの参入可能性
- 代替品の脅威:オンラインサービスに代わる別の選択肢(オフラインサービスも含む)の存在
- 買い手(顧客)の交渉力:オンライン顧客の選択肢の多さや価格感度
- 売り手(サプライヤー)の交渉力:Webサービス提供に必要なリソース(技術、コンテンツ等)の供給者の影響力

詳しい内容はファイブフォース分析について – 競争で負けないために知っておく5つの要素で紹介しています。
差別化を行う方法
強者、弱者問わず差別化を行うことは非常に重要です。特に強者も他社競合に負けないため、差別化を図り、優位性を全面に打ち出す事は珍しくありません。
特に弱者は強者に負けず劣らない差別化を図り、その優位性を示す必要があります。ただやみくもに差別化ポイントを打ち出すことは難しいと思います。その際に使う手法としてVRIO分析があります。
VRIO分析は5つの要素ごとに自社の製品やサービス、事業者としての競合優位性(差別化ポイント)を詳らかにする手法です。
- Value(価値): 企業が提供する製品やサービスが顧客にとって価値があるかどうかを評価します。つまり価値がある資源や能力があれば、機会を逃さず、脅威に対して対応ができるということを意味します。
- Rarity(希少性): その資源や能力が他社にはないものであるか、他社競合がどの程度保有しているのか。という点を評価します。希少な資源は、他社が簡単に持つことのできない競争優位の源となります。
- Imitability(模倣困難性): その資源や能力が他社に模倣されにくいかどうかを評価します。資源を持っていな企業が、その資源や能力を獲得する際に、どの程度費用的、時間的なコストを要するか。
有利・不利になるかという点を評価します。模倣困難な資源は、競争優位を長期的に保つための鍵です。
また模倣困難性の要因は以下の4つがあります。 -
- 独自の歴史的背景: その資源・能力が独自の歴史によって形成されているのか。という要因を評価します。
分かりやすい例では「過去に身分を離れた皇族が携わった素材を元にした商品が巡って、皇室に献上された」となる場合、覆すことができない歴史的な背景を有することになります。 - 優位形成の因果関係の不明性: 保有している競合優位性が、経営資源のどこに起因、依存しているのかが不明(分かり難い)ことを指します。
例として「品質は変わらないのに他社より、価格が安いがなぜ安くできるのかわからない。しかし蓋を開けてみれば、経営者の跡継ぎ同士が同じ大学の出身で互いに協業状態であった」などが挙げられます。 - 社会的複雑性: 物理的に目に見えるような資源ではなく、他社内で内製化が困難なものを指します。
例として「ブランドイメージ」が該当します。また「チームスタッフのパフォーマンス」などが当てはまります。 - 知的財産権: 特許、著作権など実質その資源、技術を独占するため模倣は極めて困難になります。
例を挙げるまでもありませんが、アニメ、漫画、調理方法、養殖技術などが該当します。
- 独自の歴史的背景: その資源・能力が独自の歴史によって形成されているのか。という要因を評価します。
- Organization(組織): 企業がその資源や能力を最大限に活用できるように組織されているかどうかを評価します。適切に組織化されていれば、その資源は企業にとって持続的な競争優位をもたらします。
例として分かりやすいのは「野球チーム」などのスポーツチームで例えることでしょうか。野球であればスター選手といった、非常に高い成績を出したオールスターチーム。
ただ選手が優れているだけでは立ち行かなくなりますので、導く監督やコーチ、高いパフォーマンスを発揮・維持できるようにするアスレチックトレーナーといった組織が必要です。
それは企業であっても変わらず、実行力、生産力、開発力などの人や設備を総合して組織となります。
この分析手法の優れている点は自社だけではなく、競合他社に当てはめて利用ができる点です。同じ要素同士を比較することで自社の競合優位性となる点、他社が優れている点を明らかにできるため、勝ちを拾いにくい部分での戦いを避けて、勝ちやすい市場でトップを狙うという戦略がとりやすくなります。
詳しい内容はVRIO分析-Webマーケティングでのやり方をわかりやすく解説で紹介しています。
セグメント化の実施方法
いままでは各種分析を実施してきました。ここからはどの市場を攻めるのかを定めていくフェーズです。ある程度分類しておいた方が戦いやすい、戦いにくいが分かりやすくなります。そのためにセグメンテーションを実施すると良いでしょう。
Web広告戦略の記事内で、セグメンテーションについて触れています。この理屈はウェブ広告以外でも使いやすい考え方のため、一部を抜粋して掲載します。
2つのセグメンテーションツリーを作る
ニーズとシーズの洗い出しができたら次に2つのセグメンテーションツリーを作成します。
このセグメンテーションツリーはニーズ、シーズのみで構成するのもよいですし、ニーズ・シーズの2つを使う構成でも構いません。おすすめは「ニーズ・シーズ2つを使う構成」です。
考え方としてはニーズ主体のマーケットインであるか、シーズ主体のプロダクトアウトにするか、その折衷案であるか。この視点で検討するとよいでしょう。
先ほどの「はじめにWeb広告は「STP」で考える」の中で例とした「車の販売店」のセグメンテーションツリーは以下のようなものが考えられます。
- ニーズ: 家族あり、独身の2軸で「家族あり」の場合は「日常の買い物」「観光・レジャー」「ドライブが趣味」がニーズとしてあり、独身も同様のニーズとした
- シーズ: 「価格」「デザイン性」「安全性能」「燃費」「乗り心地」「走行性能」とした

2つのセグメントでマトリクス図を作る
セグメンテーションツリーが完成したら2つのセグメントを掛け合わせたマトリクス図を作成します。
マトリクスにすることでこれから配信するWeb広告を漏れなくダブりがない状態を作り出すことができます。
2つのペルソナに3つのニーズ、6つのシーズを組み合わせて下記のマトリクス図になります。
| ニーズ\シーズ | 価格 | デザイン性 | 安全性能 | 燃費 | 乗り心地 | 走行性能 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 家族 日常の買い物 | ||||||
| 家族 観光・レジャー | ||||||
| 家族 ドライブが趣味 | ||||||
| 独身 日常の買い物 | ||||||
| 独身 観光・レジャー | ||||||
| 独身 ドライブが趣味 |
このようにしてセグメンテーションを行いマトリクス図を作成すると競合が得意としている市場と自社が狙うべき市場が明確になります。今回は広告のセグメントとして抜粋していますが、これを優位性やキーワード群に分類して考える方法もあります。
今回掲載したすべての分析と仕訳作業を実施すると非常に多くの時間を要しますので、必要に応じて分析と情報整理を行うようにしてください。
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弱者のウェブ戦略運用
小さい市場のナンバーワンを目指して弱者が戦いはじめた後の運用について紹介します。
サイトのアクセスデータを取得できるようにする
Googleアナリティクス4を導入しましょう。
Googleアナリティクス4(GA4)はサイトのアクセス状況を把握するウェブ解析ツールで、無料で利用することが可能です。
少し手間暇は必要としますが、ウェブサイトの状況が分からない状態では、何を改善していくべきなのかが全く見えない状態と同じです。まずはウェブサイトの状態を把握できるようにすることが非常に重要と言えます。
ウェブサイトの改善
自社ウェブサイトの状態が把握した後はウェブサイトの改善に取り組みましょう。
改善方法としてはホームページの問い合わせを増やすには点ではなく点で改善するのがベストです。どこに問題があって、どのように改善するのが良いかはすぐに把握することが難しいですが、ウェブサイトのアクセスから問い合わせまでを線でとらえると改善ポイントが分かりやすいため、サイト運用する場合は線で数字を追えるようにデータを整理すると良いでしょう。
集客としてWeb広告を検討する
検索からの流入はすぐに大きな効果を上げにくい点があります。ブランドと同じで認知されて、サービスや商品を理解するまでには時間が掛かります。それと同じように検索からの流入も施策を展開してから多少時間が掛かるものとなります。
より多くのサイトアクセスを目指すのであれば、Web広告の実施を検討してみましょう。
少ない予算で効果的なWeb広告を作る方法で紹介していますが、特定キーワードで広告を表示させる「リスティング広告」などを活用することで、サイトへのアクセスを増加させることが可能になります。
Googleリスティング広告のやり方 費用 運用-Web広告で導入する方法を説明をしております。もし自社内でWeb広告の実施が難しい場合は広告代理店やWeb制作会社など、Webに明るい会社や人に相談することをおすすめします。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は「ランチェスターに学ぶウェブ生存戦略」をテーマに過去の事例を交えて紹介をしました。
いままでに強者となる企業、弱者に該当する企業の新設や改善などを担当してきた経験からいうと、弱者の生存戦略としては「ランチェスター第1の法則」並びに「弱者がとるべき戦略」は非常に有効に作用し、常套的な戦い方であります。それだけに「戦い方」を誤るとうまく作用せずに結果が出にくい場合もありますし、試行錯誤した結果失敗することもあります。
また強者が本腰を入れた場合は弱者がコツコツと積み上げてきたシェアなどを大きく奪う戦略が取れることも事実であります。そのために弱者は5つの戦略で紹介した「隠密戦」をどれだけ実施できるかがポイントになります。
事業を行っている以上露出させることが重要と捉える人が多いのですが、必要な人に必要な情報が伝わる状態を創り出せれば、それで十分と感じます。下手に大々的に宣伝をして、儲かることを喧伝してしまったら他社の参入を促すことに繋がります。まだ未熟な市場であれば競合他社参入をすることで市場活性に繋がりますが、ある程度成熟した業界で小さい市場でナンバーワンになるためには、そのような動きは足枷に過ぎないと考えます。
これから参入を考えている。確固たる地盤を築きたい。などで小さい市場のナンバーワンを目指したい方はぜひ本記事を参考になればと思います。