2024年10月29日、Google Analytics 4(GA4)に待望の新機能「ベンチマーク」が追加されました。この機能により、自社のWebサイトのパフォーマンスを同業他社と比較できるようになり、より戦略的なデータ分析が可能になります。本記事では、このベンチマーク機能の詳細な使い方から、実践的な活用方法まで、初心者の方にもわかりやすく紹介していきます。
GA4のベンチマークとは – 機能概要と重要性

GA4のベンチマーク機能は、自社のWebサイトパフォーマンスを同業他社と比較できる画期的な機能です。これまでは自社のデータのみを見て判断するしかありませんでしたが、この機能により業界標準との比較が可能になりました。
ベンチマークの特徴と重要性
- 客観的な評価:業界標準との比較により、自社の強みと弱みを客観的に把握できます
- データの信頼性:Googleの大規模なユーザーベースを活用した信頼性の高いデータを提供
- プライバシー保護:暗号化技術により、各社のデータは適切に保護されています
- 定期的な更新:24時間ごとにデータが更新され、最新の業界動向を把握可能
ベンチマークデータの特徴
データの収集方法
ベンチマークデータは、以下の条件を満たすプロパティから収集されます。
- 最小プロパティ数の基準を満たしている
- 一定数以上のユーザーが存在する
- 有意な量のデータを生成している
データの表示形式
パーセンタイルによる表示:
- 中央値(50パーセンタイル)
- 下位25パーセンタイル
- 上位75パーセンタイル
パーセンタイルについて詳しく解説

パーセンタイルとは、データを小さい順に並べたときの位置を示す指標です。例えば:
| パーセンタイル | 意味 | 活用方法 |
|---|---|---|
| 75パーセンタイル | 上位25%の境界値 | 業界のトップ層との比較 |
| 50パーセンタイル(中央値) | データの中心的な値 | 業界標準との比較 |
| 25パーセンタイル | 下位25%の境界値 | 最低限クリアすべき基準値 |
つまり実際のGA4ベンチマークデータと照らし合わせた場合、点線で表示されている「同業他社の中央値」がベンチマークした業界の標準ということになると判断できます。
薄い緑が25%-75%タイルの範囲、そして青の実線が自サイトのパーセンタイル推移という見方になります。

ベンチマークデータを利用する方法 – 初期設定から活用まで
初期設定手順
- STEP1Googleアナリティクス画面右下の管理(歯車マーク)をクリック

- STEP2アカウント設定から「アカウントの詳細」を選択

- STEP3「モデリングのためのデータ提供とビジネス分析情報」にチェック

- STEP4設定を保存

設定時の注意点
- データ共有の同意:ベンチマークを利用するには、自社のデータも匿名化された形で共有することに同意する必要があります
- プライバシーへの配慮:共有されるデータは暗号化され、個別の企業を特定できない形で処理されます
- 設定の反映時間:設定後、データの収集と反映まで若干の時間がかかる場合があります
ベンチマークの使い方 – 実践的な操作手順
基本的な操作手順
- STEP1アナリティクスの「ホーム」に移動

- STEP2概要カード「アクティブユーザー」「表示回数」「イベント数」「キーイベント」のいずれかで「▼」をクリック

- STEP3ベンチマークを選択し、ベンチマークを比較したい指標を選択

- STEP4ベンチマークのアイコンをクリック

- STEP5ベンチマーク データをオンにする

- STEP6「ベンチマーク対象の同業他社グループ:」下部のプルダウンメニューの「▼」をクリック
- STEP7ベンチマークとして比較したい業種を選択

ベンチマークで選択できる指標もリリース当初に比べて内容が変更になっています。2025年1月29日時点の指標を記載しておきますが、リリース当初の指標についてはこの次に掲載をしておきます。
なお、GA4アナリティクスヘルプのベンチマークでは、分類と指標は新しくなっていないため注意が必要です。
ベンチマークで選択できる指標
- 分類無
- アクティブユーザーあたりの平均エンゲージメント時間
- 購入者率
- eコマース
- アクティブユーザーあたりのトランザクション
- カートに追加した回数(アクティブユーザーあたり)
- ユーザー1人あたりの購入回数
- 決済回数(アクティブユーザーあたり)
- 購入者あたりのトランザクション数
- イベント
- アクティブユーザーあたりのイベント数
- セッションあたりのイベント数
- セッション
- アクティブユーザーあたりのセッション数
- エンゲージメントのあったセッション数(1アクティブユーザーあたり)
- エンゲージメント率
- セッション キーイベント率
- 直帰率
- 平均セッション継続時間
- ページ/スクリーン
- アクティブユーザーあたりのビュー
- セッションあたりのページビュー数
- ユーザー
- DAU/MAU(1日のアクティブ ユーザー数 / 1か月のアクティブ ユーザー数)
- DAU/WAU(1日のアクティブ ユーザー数 / 1週間のアクティブ ユーザー数)
- PMAU/DAU(1が月の有料アクティブ ユーザー数 / 1日のアクティブユーザー数)
- PWAU/DAY(1週間の有料アクティブ ユーザー数 / 1日のアクティブ ユーザー数)
- WAU/MAU(1週間のアクティブ ユーザー数 / 1か月のアクティブ ユーザー数)
- セッションあたりの平均エンゲージメント時間
- ユーザーキーイベント率
- 初回購入者率
- 新規ユーザーあたりのFTP
- 新規ユーザー率
- 収益
- ARPPU(特定期間の合計収益 / 購入したアクティブ ユーザー数)
- ARPU(特定期間の合計収益 / アクティブ ユーザー数)
- アクティブ ユーザーあたりの平均購入収益額(指定期間の収益 / アクティブ ユーザー数)
- 購入による平均収益(指定期間の収益 / 購入数)
- 総広告収入(アクティブ ユーザーあたり)
リリース当初のベンチマークで選択できる指標
現在は分類が異なっているので注意してください。
- 集客
- 新規ユーザー率
- エンゲージメント
- セッションあたりの平均エンゲージメント時間
- ユーザーあたりの平均エンゲージメント時間
- 平均セッション継続時間
- エンゲージメント率
- エンゲージメント セッション数(1 ユーザーあたり)
- ユーザーあたりのイベント数
- セッションあたりのイベント数
- セッション キーイベント率
- ユーザーあたりのセッション数
- ユーザー キーイベント率
- セッションあたりのページビュー数
- ユーザーあたりのビュー
- 維持率
- 直帰率
- 1 日のアクティブ ユーザー数 / 1 か月のアクティブ ユーザー数(DAU / MAU)
- 1 日のアクティブ ユーザー数 / 1 週間のアクティブ ユーザー数(DAU / WAU)
- 1 週間のアクティブ ユーザー数 / 1 か月のアクティブ ユーザー数(WAU / MAU)
- 収益化
- カートに追加した回数(ユーザーあたり)
- ユーザーあたりの平均収益額(ARPU)
- 有料ユーザーごとの平均収益(ARPPU)
- ユーザーあたりの平均購入収益額
- 決済回数(ユーザーあたり)
- 初回購入者率
- 新規ユーザーあたりの初回購入者数
- 月間課金アクティブ ユーザー数 / 1 日のアクティブ ユーザー数(課金 MAU / DAU)
- 1 週間の有料アクティブ ユーザー数 / 1 日のアクティブ ユーザー数(PWAU / DAU)
- 総広告収入(ユーザーあたり)
- 購入者あたりのトランザクション数
- ユーザーあたりのトランザクション
ベンチマークで選択できる業界他社
下記のさらに細かい業界、他社が選択可能です。
※2025年1月29日時点で選択できる名称などを更新
- アート、エンターテインメント
- インターネット、通信
- オンライン コミュニティ
- ゲーム
- コンピュータ、電化製品
- ショッピング、小売
- スポーツ
- ニュース
- ビジネス、産業
- フード、ドリンク
- ペット、動物
- 科学
- 金融
- 健康
- 仕事、教育
- 資料
- 自動車
- 趣味、レジャー
- 住居、庭
- 書籍、文学
- 人々、社会
- 美容、フィットネス
- 不動産
- 法律、行政
- 旅行、交通
ベンチマークの見方 – データの解釈と分析
ベンチマークグラフの見方と解釈
グラフの基本要素
- 実線:自社のデータの推移
- あなたのサイトの実際の数値の変化を示します
- 点線:業界の標準的な数値
- 同業他社の中で、ちょうど真ん中に位置する数値を表します
- グレーの帯:一般的な業界の数値の範囲
- 同業他社の上位25%から下位25%を除いた、標準的な範囲を表示
- この範囲内であれば、業界として一般的なパフォーマンスと判断できます
データ分析のポイント
- 業界との比較
- 自社の実線が点線より上:業界平均以上のパフォーマンス
- 自社の実線が点線より下:改善の余地あり
- 傾向の把握
- 定期的な上下変動:季節性や曜日による影響の可能性
- 継続的な上昇/下降:施策の効果や課題を示唆

注意事項
- データの利用制限
- 当日のデータはベンチマークとして利用できません
- 2024年5月30日以降のデータから利用可能です
- 活用のヒント
- 定期的に業界標準との差を確認し、改善点を見つけることができます
- 大きな変化があった場合は、その原因を分析することで効果的な施策につながります
ベンチマークを活用したチェック指標とその傾向をみる
例えば下記のような業界カテゴリーである場合は、業界や事業の特徴を捉え、チェックする指標から比較を行い、傾向を把握した分析を行うことが必要です。
| 業界カテゴリー | 指標 | 特徴的な傾向 |
|---|---|---|
| EC・ショッピング | 購入者率 初回購入者率 | 季節変動や購買傾向の確認 |
| メディア・コンテンツ | エンゲージメント率、セッションあたりの平均エンゲージメント時間、セッションあたりのページビュー数 | 他サイトとの購読や閲覧傾向の確認 |
| B2Bサービス | アクティブユーザーあたりのセッション数、エンゲージメントのあったセッション数 | 集客施策の効果、ターゲットのニーズ深度やニーズマッチ度の傾向確認 |
ベンチマークデータの活用方法
ベンチマークデータは単一の指標では深い考察を得ることが難しいですが、いくつかの指標を合わせ評価を行ことで、ベンチマークのデータをより活用することが可能になります。
下記は一例ですが、活用方法を掲載します。
- クロス分析の実施
- 複数の指標を組み合わせた総合的な評価
- 因果関係の特定と改善策の立案
- 業界特性を考慮したKPI設定
- 時系列分析のポイント
- 季節変動の影響を考慮
- 長期トレンドの把握
- 特異値の検出と原因分析
業界別のベンチマーク活用ガイド
| 業界分類 | 重要な指標 | 分析のポイント | 改善施策例 |
|---|---|---|---|
| アート、エンターテインメント | 滞在時間、リピート率 | コンテンツの魅力度 | コンテンツの質向上、更新頻度の最適化 |
| インターネット、通信 | コンバージョン率、離脱率 | サービス導線の効率 | UI/UXの改善、機能の最適化 |
| オンラインコミュニティ | DAU/MAU、エンゲージメント率 | ユーザー活性度 | コミュニティ施策、インセンティブ設計 |
| ゲーム | ARPPU、継続率 | 収益性とエンゲージメント | 課金設計の見直し、イベント施策 |
詳細なベンチマーク指標の解説
エンゲージメント指標の詳細
- セッションあたりの平均エンゲージメント時間
- 定義:実際にページと相互作用があった時間
- 理想値:業界平均+20%以上
- 改善方法:コンテンツの質向上、UI/UX改善
- ユーザーあたりのイベント数
- 定義:1ユーザーが発生させた有意義な行動数
- 目標設定:上位25%の数値を参考に
- 最適化:CTAの配置、導線の見直し
収益化指標の詳細分析
- ユーザーあたりの平均収益額(ARPU)
- 計算方法:総収益÷総ユーザー数
- 業界標準:中央値を基準に評価
- 向上策:商品構成、価格戦略の最適化
- 初回購入者率
- 重要性:新規顧客獲得効率の指標
- 業界比較:四半期ごとのトレンド分析
- 改善方法:初回購入特典、広告施策の調整
事業別にベンチマークデータで活用方法の紹介
ここでは事業別にベンチマークのデータを活用する方法を紹介します。
ECサイトの場合
ベンチマーク対象の同業他社グループ例
フード、ドリンク→食品→スイーツ
ECサイトの場合、見る指標としては下記の4つの組み合わせが考えられます。同業の中で集客力、エンゲージメント力、購入力を見るために必要な指標です。どの指標が優れていて、どこが改善できるポイントであるのかを知るための指標になります。
ベンチマークで見ておきたい指標
- アクティブユーザーあたりのセッション数
- エンゲージメント率
- 平均エンゲージメント時間
- 購入率
工務店の場合
ベンチマーク対象の同業他社グループ例
住居、庭→リフォーム、すべてのリフォーム
リフォームなどの工務店の場合は下記の指標が考えられます。ごくごく基本的な指標ではありますが、集客ができているか、ページ内容が閲覧されているか、サイト回遊されているかなどを把握しておくと改善ポイントを明らかにしやすくなります。
ベンチマークで見ておきたい指標
- アクティブユーザーあたりのセッション数
- エンゲージメント率
- 平均エンゲージメント時間
- セッションあたりのビュー数
サイト改善が必要な場合は関連記事として工務店サイトのSEOを考慮したサイト構造での改善を合わせておすすめします。
教育・スクール系の場合
ベンチマーク対象の同業他社グループ例
仕事、教育→教育→試験対策、資格取得
基本的な指標に加えて、「一日のアクティブユーザー数/週のアクティブユーザー数」「週のアクティブユーザー数/月のアクティブユーザー数」を抑えておくと良いと考えます。
資格取得の場合は年に1回と試験回数が決まっている試験もあり、また試験日が定まっている試験が多く存在します。そのような試験の場合は資格取得の学習を始める時期が似通る場合が多くあり、他社と比べてアクティブユーザーの変動を見ておくと、集客をするべきポイントを抑えることが可能になります。
また合格発表の際に、自社サイトで案内をする場合はアクセスが集中します。この時に同業他社の状況を把握することで、自社のサイト流入状況、他社の状況を把握することで、大まかなシェア状況の把握に役立てれらます。
スクール系では入学する時期、検討する時期などがある程度決まっていることが多いため、競合との比較に役立てることが可能です。資料請求時期が似通っている業界であれば、アクティブユーザーの動向を知ることで、集客に力を入れる時期を把握して集中した施策を行うなどの活用が考えられます。
ベンチマークで見ておきたい指標
- アクティブユーザーあたりのセッション数
- エンゲージメント率
- 平均エンゲージメント時間
- セッションあたりのビュー数
- DAU/WAU
- WAU/MAU
まとめ – 効果的な活用のポイント
ベンチマーク活用の基本ステップ
- STEP1現状把握:自社の位置づけを客観的に評価
- STEP2目標設定:業界標準を参考に現実的な目標を設定
- STEP3改善計画:具体的な施策の立案と実行
- STEP4効果測定:定期的なモニタリングと調整
GA4のベンチマーク機能は、Webサイトのパフォーマンスを客観的に評価し、改善するための強力なツールです。ただし、単なる数値の比較に終わらせるのではなく、以下の点を意識して活用することが重要です。
- データの文脈理解
- 業界特性の考慮
- 自社の事業フェーズの認識
- 季節性や外部要因の影響
- 戦略的な活用
- 優先順位付けによる効率的な改善
- 中長期的な目標との整合性
- 継続的なモニタリングと調整
この機能を効果的に活用することで、より戦略的なWebサイト運営が可能になります。定期的なベンチマーク分析を通じて、継続的な改善サイクルを確立していくことをお勧めします。