Googleサーチコンソールのデータを活用したSEO改善は、多くのWebサイト運営者にとって重要な課題です。本記事では、特にバブルチャートを使用したデータ分析手法に焦点を当て、実践的なSEO改善のアプローチを解説します。データ分析の初心者から上級者まで、すぐに実践できる具体的な手法をご紹介します。
サーチコンソールの基礎知識
サーチコンソールとは
Google サーチコンソール(旧Webマスターツール)は、Googleが無料で提供しているWebサイト分析ツールです。このツールを使用することで、以下のような重要な情報を把握することができます。
- 検索パフォーマンス:サイトの検索結果での表示回数、クリック数、平均掲載順位など
- インデックス登録状況:Googleが認識しているページ数と状態
- モバイル対応:スマートフォンでの表示に関する問題点
- セキュリティ関連:マルウェアやハッキングの検出情報
主要な機能と特徴
1. 検索パフォーマンスレポート
サイトがGoogle検索でどのように表示され、どれくらいのクリックを獲得しているかを詳細に確認できます。以下の指標が重要です。
- 総クリック数
- 総表示回数(インプレッション)
- 平均クリック率(CTR)
- 平均掲載順位
2. URL検査ツール
特定のページがGoogleにどのように認識されているかを確認できます。
- インデックス登録状態
- モバイルフレンドリー対応状況
- 構造化データの検証
- AMP(モバイル最適化)の確認
Search Consoleを基にバブルチャートを使ったデータ分析手法
Search Consoleのデータを基にしたバブルチャートを使う
Search Consoleのデータを基にしたバブルチャートを使うには、まずGoogle検索セントラルのドキュメントである「Search Console のバブルチャートで SEO を改善する」にアクセスしてください。

「こちらのテンプレート」をクリックするとLooker Studioの「Google Search Console bubble chart」が表示されます。

このまま使うこともでき「クリックしてデータを選択」をクリックすると自身のサーチコンソールのデータが一覧で表示されますので、任意のサイトを選択します。
ただこのままだと自分好みに編集ができませんので、右上にある「編集して共有」をクリックしましょう。すると「編集して共有」が「共有」にかわっているのを確認できるかと思います。

画面右上のLooker Studioのロゴをクリックしてデータの一覧を表示すると「Google Search Console bubble chart」のコピーが作成されているのが確認できます。

コピーしたバブルチャートをクリックするとコピーしたバブルチャートの画面が表示されます。このまま利用しても良いですし、「編集」して他のデータでバブルチャートを形成することも可能です。


バブルチャートの基本構造
バブルチャートは、3つの異なる指標を1つのビジュアルで表現できる強力なデータ可視化ツールです。サーチコンソールのデータを分析する際の各要素の意味は以下の通りです。
- X軸(横軸):クリック率(CTR)を表示
- Y軸(縦軸):平均掲載順位を表示(反転させることで上位表示が上部に来るように調整)
- バブルの大きさ:クリック数を表現
- バブルの色:デバイスカテゴリー(PC、モバイル、タブレット)を区別
4つの象限による分析
バブルチャートを活用した分析では、クエリの最適化機会を効果的に見出すことができます。チャート上では、y軸に平均掲載順位、x軸にクリック率(CTR)を配置し、バブルのサイズでクリック数の合計を、色でデバイスカテゴリを表現しています。赤い破線で示される「平均」基準線により、チャートは4つの特徴的な領域に分割されます。
※注意:実際の4つの領域の分布は、各サイトのクエリ特性によって異なります。
| 象限 | 特徴 | 分析と対応策 |
|---|---|---|
| 第1象限(右上) | 高順位・高CTR |
– すでに良好なパフォーマンスを示している – 現状の品質維持に注力 – 大きな改善作業は不要 |
| 第2象限(左上) | 高順位・低CTR |
主に以下の3つの可能性を検討: 1. 競合との差別化: – 構造化データの実装 – リッチリザルトの最適化 2. 意図しない最適化: – 関連性の低いクエリの見直し – 必要に応じてコンテンツの調整 3. 情報の直接表示: – 営業時間や連絡先など、検索結果で直接表示される情報の影響を確認 – サイトの目的に応じてタイトルや説明の最適化 |
| 第3象限(左下) | 低順位・低CTR |
クリック数の大きいクエリに注目し、2つの観点で分析: 1. 関連性の高いクエリ: – すでに表示されている利点を活かす – 優先的に最適化を実施 2. 関連性の低いクエリ: – コンテンツの方向性を見直し – より適切なクエリへの最適化を検討 |
| 第4象限(右下) | 低順位・高CTR |
ユーザーニーズとの高い関連性を示唆: 1. 既存ページの確認: – 関連コンテンツの有無を確認 – 必要に応じて新規ページ作成 2. コンテンツの拡充: – ユーザーニーズに応じた情報追加 – より詳細な内容の提供 |
デバイスカテゴリの考慮:
クエリパフォーマンスを分析する際は、デバイス別の特性も重要な要素となります。例えば、位置情報に関連するクエリでは、モバイルとPCで異なるパフォーマンスを示す傾向があります。特に移動中のユーザーによる検索では、モバイルでより高いパフォーマンスを発揮する場合があります。
データの可視化と解釈方法
効果的なデータフィルタリング
バブルチャートのデータをより意味のある形で解析するために、以下のようなフィルタリングを行うことが重要です。
- 期間の設定:
- 短期(28日):急激な変化の把握
- 中期(3ヶ月):季節変動の確認
- 長期(6ヶ月以上):トレンドの分析
- デバイスの選択:
- モバイルとPCの比較分析
- デバイス別の最適化機会の特定
- クエリの絞り込み:
- ブランドワード vs 非ブランドワード
- 商品名 vs カテゴリー名
- 情報系 vs トランザクション系
データパターンの識別と解釈
バブルチャート上で見られる特徴的なパターンとその意味:
1. クラスター形成
似たような性質を持つクエリが集まっている場合、それらに共通する要素(カテゴリーページ、商品タイプなど)を特定し、一括で最適化を検討できます。
2. 外れ値の分析
全体的なパターンから大きく外れているクエリは、特別な注目や調査が必要な可能性があります。良い方向でも悪い方向でも、その理由を深掘りすることで有益な知見が得られます。
キーワード単位でのデータ分析
バブルチャートの状態でどの象限のワードを改善していくのかを確認することはできますが、リストで見たい場合には非常に不便です。
またクリック数と類似ワードと付属するワードも合わせて把握することで優先度が変わってきますので、バブルチャートだけで判断せずにワードをリスト化した資料でも判断すると良いでしょう。
まずはバブルチャートの情報をキーワードリスト化して、どの象限なのか絞り込みを行う手順を紹介します。
キーワードリストデータの作成手順
- STEP1Looker Studioバブルチャートの右上の「その他」をクリック
※カーソルを合わせても縦三点リーダーのようなボタンが表示されない場合がありますので、カーソルを何度も動かすと表示されます

- STEP2エクスポートをクリック

- STEP3データのエクスポートが表示されるので「Googleスプレッドシート」を選択し「エクスポート」をクリック

- STEP4データ量が多い場合はスプレッドシートにデータを送信する時間が掛かる場合があります。

- STEP5スプレッドシートにデータが送信されたのを確認。このままだと、各クエリがどの象限に属するのか判断ができないため成形します。

- STEP6CTR、Average Positionの数値は見やすい桁、表記に変更します。またバブルチャートと同様に「平均」が分かるようにaverage関数を入れて平均値を出力しておきます。

- STEP7データ→フィルタを選択してスプレッドシート内のデータを絞り込める状態にします。
この状態でバブルチャートと同様に象限事のキーワードを閲覧することが可能になります。下記画像では第4象限である低順位、高CTRの絞り込み例としてデータ表示をしてあります。この状態でデータを分析する状態が整いました。

最適化戦略の立て方
象限別の具体的な改善アプローチ
第1象限(高順位・高CTR)の戦略
Google検索セントラルの記事では「すでにパフォーマンスは良好です。必要な作業は特にありません。」としていますが、アプローチとして下記を意識しておきましょう。
- 定期的なコンテンツの更新
- ユーザー体験の更なる改善
- 関連キーワードの拡張
- 競合分析による優位性の維持
第2象限(高順位・低CTR)の戦略
Google検索セントラルの見解によると、この象限のクエリのCTRが低い理由には複数の要因があり、それぞれに応じた適切な対応が必要です。
- 競合との差別化が必要なケース:
- 構造化データのマークアップの実装
- リッチリザルトの最適化
- 視覚的要素の改善
- 意図しない最適化への対応:
- 関連性の低いクエリの特定
- 不要なキーワードの調整
- コンテンツの適切な方向付け
- 直接的な情報表示の影響:
- 営業時間や連絡先情報の検索意図の確認
- ビジネス目的に応じたメタデータの最適化
- タイトルと説明文の明確化
- デバイス特性の考慮:
- モバイルとPCでの表示差異の確認
- デバイス別の最適化戦略の検討
- ユーザーの検索コンテキストの理解
※特に大きなバブルサイズ(高トラフィック)のクエリについては、上記の要因を優先的に確認し、適切な改善策を実施することが推奨されています。
第3象限(低順位・低CTR)の戦略
Google検索セントラルによると、この象限のクエリは一見すると改善が困難に思えますが、トラフィックのポテンシャルに着目することで効果的な改善が可能です。
分析の重要ポイント
- トラフィック規模の確認:
- バブルサイズ(クリック数)の大きいクエリを優先的に分析
- 低CTRでも大量のトラフィックを生む重要クエリの特定
クエリの分類と対応戦略
- 関連性の高いクエリ:
- すでに検索結果に表示されている優位性を活用
- 既存の検索表示位置を基盤とした最適化
- 優先的な改善施策の実施
- 関連性の低いクエリ:
- コンテンツの方向性の見直し
- より適切なターゲットクエリの選定
- 関連性の高いトラフィック獲得への注力
重要な注意点:
- 一見すると改善が困難に思える領域でも、適切な分析と戦略で大きな改善機会が存在する可能性があります。
- すでに検索結果に表示されているという利点を活かし、効率的な最適化を進めることが推奨されています。
- 関連性の判断に基づいて、リソースの適切な配分を行うことが重要です。
第4象限(低順位・高CTR)の戦略
Google検索セントラルによると、この象限のクエリは「ユーザーとの関連性が高く、大きな改善ポテンシャルを持つ」とされています。高いCTRは、コンテンツへの強い需要を示唆しています。
基本的な分析アプローチ
- 現状評価:
- 既存ページの有無の確認
- 現在の掲載順位の分析
- クリック率の詳細な調査
具体的な改善戦略
- 新規ページが必要な場合:
- サイト内の関連情報の集約
- 包括的な新規ページの作成
- ユーザーニーズに基づいたコンテンツ設計
- 既存ページの強化:
- コンテンツの拡充と更新
- ユーザーニーズへの対応強化
- 関連情報の追加と整理
技術的な改善ポイント
- ページ品質の向上:
- Core Web Vitalsの最適化
- ページ読み込み速度の改善
- モバイル対応の強化
改善の優先度について:
- すでに高いCTRを獲得できているため、掲載順位の改善が直接的な成果につながる可能性が高い領域です。
- 例えば、ガーデニングサイトでの「木造小屋の作り方」のような具体的なニーズに対しては、特に丁寧な対応が推奨されています。
- コンテンツの質と量、技術的な最適化の両面からのアプローチが効果的です。
改善施策の実施と効果測定
効果的な改善サイクルを回すためのポイント:
- 施策の優先順位付け:
- 影響度の大きさ
- 実装の容易さ
- リソースの制約
- 期待されるROI
- 効果測定の設計:
- KPIの設定
- 測定期間の決定
- 比較基準の確立
- PDCAサイクルの確立:
- 定期的なデータ確認
- 改善施策の見直し
- 新たな課題の特定
まとめ:効果的なSEO改善の実現に向けて
バブルチャート分析の利点と注意点
バブルチャートを活用したSEO改善には、以下のような利点と注意すべき点があります。
メリット
- データの視覚的な把握が容易
- 複数の指標を同時に分析可能
- 改善優先順位の決定がしやすい
- パターンや異常値の発見が直感的
注意点
- データ量が多すぎると判読が困難
- 期間設定による結果の変動
- 季節性の考慮が必要
- 競合分析との組み合わせが重要
実践的なアプローチ手順
-
STEP1
現状分析サーチコンソールのデータを収集し、バブルチャートを作成して現状を把握します。
-
STEP2
改善計画の策定各象限のデータを分析し、優先的に取り組むべき課題を特定します。
-
STEP3
施策の実施特定された課題に対して、具体的な改善施策を実行します。
-
STEP4
効果測定と改善実施した施策の効果を測定し、必要に応じて改善を行います。
長期的な成功のために
1. 継続的なモニタリング
定期的なデータチェックと分析を行い、変化や傾向を把握することが重要です。
- 週次でのクイックチェック
- 月次での詳細分析
- 四半期ごとの総合評価
2. 柔軟な戦略調整
市場環境やユーザーニーズの変化に応じて、戦略を適切に調整します。
- 検索トレンドの把握
- 競合動向の監視
- 新技術への対応
最後に
サーチコンソールのバブルチャートを活用したSEO改善は、データドリブンなアプローチによって効果的な施策を実施するための強力なツールとなります。しかし、これはあくまでも全体的なSEO戦略の一部であることを忘れないでください。以下の点を常に意識しながら、継続的な改善を進めていくことが重要です。
- ユーザーファースト:
- 検索意図の理解と満足度の向上
- コンテンツ品質の維持・向上
- ユーザー体験の最適化
- データ活用の高度化:
- 多角的なデータ分析
- AIツールの適切な活用
- 予測分析の導入
- 持続可能な改善:
- リソースの適切な配分
- 段階的な施策の実施
- 長期的な視点での戦略立案
バブルチャート分析を起点としたSEO改善は、データに基づく意思決定と効果的な施策実施を可能にします。この手法を自社のSEO戦略に組み込み、継続的な改善サイクルを確立することで、長期的な検索流入の増加と質の向上を実現することができるでしょう。