WebマーケティングやWebサイト制作の現場で、「競合優位性」を明確にできなくて困ったことはありませんか？
自社のサービスや製品に自信があっても、競合他社と比べて何が優れているのだろうか。と思い悩んだ時に、使える便利なフレームワークがあります。
今回は「競合優位性」を明らかにして、WebマーケティングやWebサイト制作の現場で活用できる方法を交えて紹介いたします。

VRIO分析とは

VRIO分析の読み方

ブリオ（VRIO）分析と読みます。

VRIO（ブリオ）分析4つの分析要素

VRIO分析は、企業の経営戦略における経営目的を達成するための構成要素の一つである「競合優位性」を紐解き、評価するためのフレームワークです。
VRIOは、それぞれ「Value（価値）」「Rarity（希少性）」「Imitability（模倣困難性）」「Organization（組織）」の頭文字をとったものです。この分析を通じて、企業が持つ資源や能力を、どのようにして他社に対して優位性を持ち、それを持続的に維持できるかを判断します。

VRIO分析の各要素について

VRIO分析の4つの要素は、企業が競争優位を確立し、それを長期的に維持するための重要な指標となります。

1. Value（価値）: 企業が提供する製品やサービスが顧客にとって価値があるかどうかを評価します。つまり価値がある資源や能力があれば、機会を逃さず、脅威に対して対応ができるということを意味します。
2. Rarity（希少性）: その資源や能力が他社にはないものであるか、他社競合がどの程度保有しているのか。という点を評価します。希少な資源は、他社が簡単に持つことのできない競争優位の源となります。
3. Imitability（模倣困難性）: その資源や能力が他社に模倣されにくいかどうかを評価します。資源を持っていな企業が、その資源や能力を獲得する際に、どの程度費用的、時間的なコストを要するか。
   有利・不利になるかという点を評価します。模倣困難な資源は、競争優位を長期的に保つための鍵です。
   また模倣困難性の要因は以下の4つがあります。
4. 　
   • 独自の歴史的背景： その資源・能力が独自の歴史によって形成されているのか。という要因を評価します。
     分かりやすい例では「過去に身分を離れた皇族が携わった素材を元にした商品が巡って、皇室に献上された」となる場合、覆すことができない歴史的な背景を有することになります。

   　

   • 優位形成の因果関係の不明性： 保有している競合優位性が、経営資源のどこに起因、依存しているのかが不明（分かり難い）ことを指します。
     例として「品質は変わらないのに他社より、価格が安いがなぜ安くできるのかわからない。しかし蓋を開けてみれば、経営者の跡継ぎ同士が同じ大学の出身で互いに協業状態であった」などが挙げられます。

   　

   • 社会的複雑性： 物理的に目に見えるような資源ではなく、他社内で内製化が困難なものを指します。
     例として「ブランドイメージ」が該当します。また「チームスタッフのパフォーマンス」などが当てはまります。

   　

   • 知的財産権： 特許、著作権など実質その資源、技術を独占するため模倣は極めて困難になります。
     例を挙げるまでもありませんが、アニメ、漫画、調理方法、養殖技術などが該当します。

   　

5. Organization（組織）: 企業がその資源や能力を最大限に活用できるように組織されているかどうかを評価します。適切に組織化されていれば、その資源は企業にとって持続的な競争優位をもたらします。
   例として分かりやすいのは「野球チーム」などのスポーツチームで例えることでしょうか。野球であればスター選手といった、非常に高い成績を出したオールスターチーム。
   ただ選手が優れているだけでは立ち行かなくなりますので、導く監督やコーチ、高いパフォーマンスを発揮・維持できるようにするアスレチックトレーナーといった組織が必要です。
   それは企業であっても変わらず、実行力、生産力、開発力などの人や設備を総合して組織となります。

VRIO分析の利点

VRIO分析は、企業が持つ資源や能力を体系的に評価することで、戦略的な意思決定に役立ちます。特に、競争優位を持つ資源を特定し、その維持・強化を図ることで、企業は市場での地位を強化できます。
また、模倣困難性や希少性の高い資源を見つけることで、他社との差別化を図ることが可能です。

わかりやすく言うとVRIO分析とは？

競争相手よりも良い点を見つける方法

わかりやすい言葉に言いかえるとこのような表現が受け入れやすいのではないでしょうか。
良い点の見つけ方を分かりやすく表現すると、下記の4つに分けられます。

競争相手よりも良い点を見つける4つのポイント

• いいね！と思ってもらえるサービス・商品であるか
• 他にはない「めずらしい」ものか
• まねがされにくいことか
• 素晴らしいチームであるか

上記のような点で考えると、競争相手よりも自分の良い点が見つけやすくなります。

マウントをとる道具ではない

「良い点」を探していると、相手よりもどれだけ優れているのか。だけ見てしまいがちです。
根本的にこの「良い点の見つける方法」は、自身のサービス・商品を購入してもらえるように、良い点をきちんと伝えるための方法であることを忘れないようにしましょう。

Webマーケティングにおける-VRIO分析のやり方

Webマーケティング領域でのVRIO分析はWebだけみればよいのでしょうか。答えは「NO」です。
経営戦略におけるVRIO分析に加えて、Web領域の分析も必要になります。

例えば「日本酒の酒造」だったとします。この酒造では日本各地の販売店、卸業者、飲食店などにお酒を卸ていますが、Webでは会社ホームページも兼ねるECサイトを運営しています。
競合は日本全国にある酒造ですが、Web領域においては展開していない酒造もあるため、ある程度競合は絞られます。
扱っている日本酒の味、人気、商圏などを考慮して、競合酒造A、競合酒造Bの2社を昔からベンチマークしている状態です。

自社の経営資源を分析

かなり大まかですが、この酒造は以下の経営資源と能力を有することが分かりました。以下の評価を元に競合と比べて競合優位性となるかの点を比較します。

1. Value（価値）: 日本料亭など和食を扱う老舗に卸しており、料理の邪魔をしない辛口が好まれる日本食の中で、濃醇辛口の味わいは料理との食べ合わせ次第で、何とも言えない旨味を引き出すと話題。
2. Rarity（希少性）: 昔からの口伝製法の日本酒造り
3. Imitability（模倣困難性）: 寛永からある酒造であり○○県で初めての酒造という背景と、口伝製法は品質が安定しなかったが約20年前に高品質での安定化に成功。
   現在では「口伝の酒」としてブランドが定着しており、商標権を取得済み。
4. Organization（組織）: 品質を安定させた技術のある杜氏を筆頭に全国でも珍しい女性杜氏が在籍。女性が活躍する酒造として取り上げられたことも。
   また新たな蔵を増築したことで増産が可能となり、新たなブランドの開発、研究をする設備と体制となった。

Web上のVRIO分析

次にWeb上での分析を行います。オフライン・オンラインを一つにまとめて分析にしてもよいとは思いますが、オフライン・オンラインの双方でマーケティング活動を行うことを想定した場合に、競合と比べて「どこが弱く」「どのあたりに優位性」があるのか線引きをしやすくするために、オンライン、オフラインを分ける方法をおすすめします。
上記酒造の例でWeb上の評価が参考例です。

1. Value（価値）: とあるインターネット通販のショッピングモールで「日本酒 濃厚辛口部門で年間売上が1位」を獲得
2. Rarity（希少性）: 日本酒口コミサイトで★4.5
3. Imitability（模倣困難性）: 早くからWebの販売チャネルを確保に乗り出したため、施策の一環として実施したコンテンツマーケティングである、酒造りに関するコラムの露出が多くアクセス数を一定数確保出来ている。
4. Organization（組織）: 専任のWebマーケティング部門、担当者を配置、また自社のブランド、商品を理解している外部のクリエイティブの制作企業、サイト運用支援企業、フロントエンド、バックエンドの支援企業と長らく協業の実績がある。

VRIO分析のやり方として、かなり分かりやすい例を挙げてきました。
先に結果を記載しましたが、本来は洗い出し→競合比較→4要素へ反映の手順になります。比較のプロセスを詳細に記載しませんが、上記と同じく競合が持つ優位性を書き出し自社と比べてどうであるかを評価する手順になります。

USP（ユニークセリングプロポジション）を定める

競合優位性が明確になったらUSP（ユニークセリングプロポジション）を決めていきましょう。
USPとは自社のサービス、商品が持つ独自の強みです。つまりは顧客に対してどのような価値があり、提供できるかを明示することです。
分かりやすい例として「吸引力の変わらない、ただ一つの掃除機」「驚きの白さ」などが該当します。
コピーではなくても構いませんが、基本的には一目で顧客にとって、その価値を得ることで、問題や悩みが解決できることが分かることが重要です。
自社が言いたいことを定めるのではなく、顧客（消費者）目線で価値を考えるとより良いUSPを定めることができます。

Webマーケティングの展開

VRIO分析後、USPを定めたらあとはアウトプットを行います。
経営・ブランドやWebマーケティング戦略とターゲットのタッチポイントなど、さまざまな要因、プロセスを経て展開先は決めていきますが、展開先としては下記が考えられます。

• ホームページ： VRIO分析の結果を元にして「私たちの強み」「選ばれる理由」「提供できる価値」「採用情報」などへ展開が可能です。
• 広告： USPを元に広告見出しとし、リスティング広告などあらゆるWeb広告に活用ができます。
• SNS： VRIO分析を元に、SNS用のコンテンツを作成、USPを自社名やブランド名に添えて発信することが考えられます。
• メールマガジン USPを件名、署名欄、自社名と併記などの利用が可能です。
• SEO ブランド名、コピーといった指名ワードの定着、検索ワードがUSPに入っている、または関連性が高い場合は流入増加に結び付く可能性があります。
• ダウンロード資料 USPを添える、自社紹介で優位性を紹介コンテンツとして作成すること可能です
• 動画 USPを紹介する動画、短尺動画に自社の優位性を盛り込んだ動画は実際に作成している企業もあります。
• バナー 広告ではなく、協賛、協業時に自社紹介される際のバナー活用に盛り込みます。
• プレスリリース プレスリリースを行う際に優位性を加味した内容にする活用方法があります。
• 他Webメディア 例えば集客力の高いtoB向けマッチングサイト、口コミサイトで自社を紹介する際にUSP、競合優位性を記載することで、価値を届けることが可能です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。VRIO分析をWebマーケティングに活用することは、競合他社との差別化につながることだけではなく、独自のコンテンツ制作、ユーザー視点に立ったコンテンツ制作にも役立ちます。
VRIO分析を一定期間ごとに刷新することで、持続的な競争優位を築くことができ、Webサイト並びにWebマーケティング活動において高い競争力を獲得することにつながります。
まだ実施していない場合は、一度実施ことをおすすめいたします。